取手駅
Column
常磐線沿線の千葉県、茨城県南部は東京のベッドタウンとしての性質が強く電車の本数が日中毎時6本と多い。しかし取手以北からは郊外の側面が強くなり日中毎時4本と少なくなる。これは単に取手以北の利用者が少なくなることに関係している。
取手駅はその利用者数に段差が生じる駅であり、運行形態が分断されている。上野方面からの列車は取手駅で折り返すことが多い。
利用者数の変化もそうだが、「取手」〜「藤代」間に常磐線の運行本数が制限されてしまう原因があるのだ。これは普通に列車に乗っているだけでは気づかないものである。
それは「デッドセクション」である。この地点は藤代駅から取手駅方面に向かって約1.3km地点にある。
デッドセクションというのは主に電化された鉄道において、異なる電化方式の間に設けられた架線に電力が供給されていない区間のことを指す。死電区間ともいうそうだ。
この「取手」〜「藤代」間のデッドセクションを中心として取手方面が直流1500V、藤代方面が交流20000V(50Hz)となっている。
そもそも直流と交流って何が違うの?ここからはそれぞれ電化方式の違いについて説明する。
直流
直流の仕組み
- プラスからマイナスへ1方向に電気が流れる。
- プラスは変電所から電気を架線(き電線・トロリー線)へ、架線からパンタグラフを通じて電車に電気を供給。
- マイナスは電車の車輪からレールへ、レールから吸い上げ線を通じて変電所に電気が戻る。
直流のメリット
- モーターの構造を単純にできるため車両の製造コストを安くすることができ、高密度運転や1両あたりの扉数が多い路線に向く。
- 電圧が低いため周辺設備へ電流が流れないように取る間隔(絶縁距離)を狭くでき、建設費が安くなる。
直流のデメリット
- 電圧が低いために変電所から電車に電気が届くまでに減退が発生し弱くなりがち。結果変電所の設置間隔が狭くなり、多くの変電所を必要とするため設備コストが高い。直流の場合、高電圧で供給された電気を扱うことは車両機器上難しい。
まとめ
多くの変電所が必要なため変電所を少なくできる短距離路線、車両コストが安く多くの本数が確保できるため利用客の多い路線、電圧が低く絶縁距離を狭くできるため土地が縮小可能。これらの理由から都市部の通勤路線で多く採用される。
交流
交流の仕組み
- 直流に比べて電圧が高く、プラスとマイナスが一定時間ごとに入れ替わるため電気の流れる方向は常に変化している。
- 架線を通じて受け取った電気は車両に搭載された変圧器と整流器を通してモーターに適した電力に変換する。
交流のメリット
- 高電圧なため変電所から電気が電車に届くまで減退が発生しにくい。よって変電所の数も少なく済むことから設備コストが安くなる。
交流のデメリット
- 高電圧を用いるため電車が使用可能な電圧に下げる重い変圧器などが必要。したがって車両の製造およびメンテナンスコストが高くなり、電車も重量化する。
- 高電圧なため周辺設備へ電流が流れないように取る間隔(絶縁距離)を広く必要とする。よって建設費が高くなる。
まとめ
変電所を少なくできるため長距離を走る路線、車両コストが高くなるため利用客と運行本数が少ない路線、電圧が高く絶縁距離を広く必要とするため広い土地が必要。これらの理由から地方のローカル線で多く採用される。
長くなってしまったが以上のような特徴がある。簡単に言えば直流は都市部向き、交流は地方向きということだ。
続く(藤代のページへ)
常磐快速線は緑色のE231系、青色のE531系、特急のE657系の3種類が走っている。
この内緑色のE231系は常磐快速線と上野東京ラインを含む「品川」〜「取手」間の運用に限られ、取手以北に乗り入れることはない。成田線も走っているが今回そちらには着目しない。
常磐快速線におけるE231系は10両+付属編成の5両を連結した15両編成で運行される。15両と長いため、多くの乗客を一度に運ぶことができ輸送力に優れている。
E231系の輸送力の多さは単に長いだけではない。向かい合う座席のボックス席がなく全てロングシート。グリーン車もトイレもなく車内が広い。編成の長さに加え車内の広さを合わせ持っているのだ。
オールロングシートかつ15編成。これは日本唯一のもので日本最大の輸送力を誇っている。
ここでE231系にどれだけの人が乗れるかを見ていく。E231系の定員は先頭車が約140名、中間車が約160名だ。先頭車は乗務員室が設けられているためその分定員が少ない。
15両編成だが10両+5両のため先頭車は合計4両となり、中間車は11両となる。
つまりE231系15両の定員は
140×4+160×11=2320
およそ2320人乗れるという計算になる。比較対象がなく実感しにくいと思うので同じ常磐線を走る15両のE531系を見てみる。
E531系の先頭車はトイレつきが約130名、トイレなしが約140名。中間車が約160名、グリーン車が90名だ。
こちらは先頭車にトイレが組み込まれているためその分定員が少なくなっている。ただ5両の付属編成の先頭車は一方にしかトイレがない。
また中間車にグリーン車が2両併結されている。こちらの定員は1両で90名だ。
つまりE531系15両の定員は
130×3+140+160×9+90×2=2150
E231系と比較しておよそ170人ほど少ない。だいたい1両分の差でこちらはグリーン車の存在が大きい。しかし、グリーン車は快適空間を提供するための車両なので輸送力に反映されているのか疑問な所だが・・・。
ここからはなぜ常磐線に15両オールロングシートの車両ができたのかを見ていく。
理由は簡単で混雑が激しいからである。常磐線は周辺に都心に向かう競合路線がないため、利用客が常磐線に集中するという特徴がある。それ故に東京都心寄りの区間は混雑が著しく、前は積み残しが発生するぐらい混雑していた。
当時の車両である103系と415系はそれぞれ10両、12両で運行されていたが混雑緩和のために15両に増強する。103系は現在の快速線、415系は中距離列車にあたる。しかし、それでも積み残しや遅延が毎日のように発生する状態だった。
2002年になると103系より定員が多いE231系が投入され、2006年までに全ての103系を置き換えた。415系も2005年にはE531系に置き換えられる。
より多くの乗客が運べる2種類の新車両、そして2005年には競合路線となるつくばエクスプレスが開業し常磐線の混雑は緩和することとなる。
ここからはE231系の前身にあたる103系の定員を見てみよう。新しい車両に対してどのぐらいの輸送力だったのだろうか。
103系の定員は先頭車が約130名、中間車が140名である。E231系同様、座席はオールロングシートで10両+付属編成5両の15両である。
つまり103系15両の定員は
130×4+140×11=2060
約2320人乗れるE231系と比較しておよそ260人ほど少ない。まあ、古い車両なので最近の車両と比較しても勝てるはずないが・・・。
いずれにせよ、15両オールロングシートは常磐快速線を象徴する日本唯一のもの。日本最大の輸送力なのだ。
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