鹿島神宮駅

Column

かしま号

 

鹿島神宮駅前にはJR鹿島線よりも遥かに本数が多く全てが東京駅まで直通の高速バス「かしま号」が発着している。

 

かしま号は東京駅と茨城県鹿嶋市・神栖市・潮来市を結ぶ高速バスで低廉な運賃、速達性、使いやすい経路から人気が高く、平行在来線のJR鹿島線の特急あやめを廃止に追い込むほどの路線である。鹿島臨海工業地帯への通勤や出張、水郷潮来あやめまつりといった鹿行地域の観光、カシマサッカースタジアムへのサッカー観戦など多種多様な需要があるため日本有数の高頻度運行路線に成長しており、高速バスの運行本数としては首都圏No1を記録するまでになっている。

 

今回はそんなかしま号に鹿島神宮駅から乗って東京駅を目指してみよう。

 

 

 

鹿島神宮駅前です。かしま号のバス停は鹿島神宮駅前すぐ。一瞬でわかりました。

 

ここでかしま号とJR鹿島線の時刻表を比較してみよう。

 

※2025年10月現在の時刻表です
JR鹿島線は朝を除けば1時間に1本ほど、ほとんどが佐原止まり。ローカル線という言葉がふさわしい。

 

※2025年10月現在の時刻表です
一方かしま号は日中でも1時間に3〜4本、全て東京駅行きで始発もJR鹿島線より1時間30分ほど早い。正直、比較するのがおこがましいほどかしま号の方が良い。終電はJR鹿島線の方が1時間ほど遅いがだからなんだというレベル。

 

運賃の方は鹿島神宮駅から東京駅までJR線だと1980円、かしま号だと1950円とわずかに30円安い(IC優先・2025年現在)のがJR線に対しての皮肉にも感じられる。

 

かしま号の鹿島神宮駅から東京駅までの所有時間は約2時間20分。JR鹿島線は東京駅まで乗り換えなしの列車が1日1往復しかないので時間に関しては比較しないものとする。

 

 

かしま号の路線図。鹿嶋市・神栖市・潮来市の茨城県鹿行地域で客を拾ってから水郷潮来バスターミナルから東京駅までノンストップである。

 

 

さっそくかしま号に乗車してみよう。運賃は前払いだ。SuicaといったICカード乗車券が使用できる。

 

因みにかしま号の運行会社はジェイアールバス関東・関東鉄道・京成バスの3社。今回運行を担当するのは関東鉄道だ。

 

 

お、座席にコンセントがついているぞ。

 

 

後ろの方にはトイレがある。長旅でも安心だ。ただし臨時便においてはトイレつきでない車両で運行する場合があるとのこと。まあ基本的にトイレはあるものだと思ってよい。

 

 

トイレの中はこんな感じ。窮屈で天井は低く、身長180cm近くある自分の立ちションは屈みながらになってしまう。でもトイレがあるだけで安心感は段違い。

 

 

かしま号が定刻通りに出発した。日曜日の鹿島神宮駅7時50分発の乗客は自分含め2人、鹿嶋市役所で7〜8人、鹿島宇宙センターで1人。

 

 

アートホテル鹿島セントラル。神栖市のランドマークとして親しまれるホテルのようだ。ここで10人以上の乗車があって座席の窓側の大部分は埋まった。その後水郷潮来バスターミナルで再び多くの乗車があり、体感7割ぐらい座席が埋まった。

 

 

水郷潮来バスターミナルを発車した後は東関東自動車道と首都高を通って東京駅までノンストップだ。約1時間40分走りっぱなしである。渋滞さえなければ途中停車駅がないので東京駅に向かってどんどん進んでいく。

 

 

JR成田線と総武本線に並走しつつ直線的なルートで、JR稲毛駅あたりからJR京葉線のルートと平行していく。途中で東京ディズニーリゾートや東京スカイツリーが見えたりする。

 

 

首都高を抜けると一般道を通って東京駅に到着となる。お疲れ様でした。

 

 

東京駅では日本橋口に到着する。かしま号を東京駅から利用する場合は日本橋口からではなく八重洲口から発車するので、東京駅からかしま号を利用する場合は八重洲口へ行こう。

 

 

乗ってみた感想だが、鹿島神宮駅から東京駅に直行というのは現在のJR鹿島線ではできない(特急あやめを潰したのはかしま号だけど)ため、かしま号が非常に便利に感じられた。1本くらい乗り遅れても問題できそうな本数の多さも魅力的だった。

 

 

カシマスタジアム号

 

 

東京2020年オリンピック・パラリンピック。東京都を中心に首都圏の各地で競技会場が選ばれ、コロナ禍の中で開催されたのだった。

 

その中でサッカー会場に選ばれたのは首都圏から約110km、茨城県鹿嶋市にあるカシマサッカースタジアムだ。

 

 

2020年7月と8月に競技の開催が決まったのだが、カシマサッカースタジアムまでは首都圏から遠く最寄り駅となる鹿島神宮駅・鹿島サッカースタジアム駅の鹿島線・鹿島臨海鉄道線はローカル線なため運行本数が1時間に1本程度しかない。

 

東京から鹿島神宮には高速バスのかしま号がおよそ20分間隔で運転されているが、大勢の観客を捌くのは難しいだろう。こんな場所でどうやって観客を呼び込むつもりなのか。

 

そこでJR東日本は観客のために首都圏の21路線において終電の繰り下げ、運転区間の延長、臨時列車の運行を決めた。終電の繰り下げは遅いところで深夜2時まで運転することになった。

 

鹿島線は終電の繰り下げは行われなかったものの「カシマスタジアム号」という臨時列車を試合開催日に設定した。鉄道の一度の輸送力はバスとは比べ大幅に勝っているからだろう。

 

その内容は東京駅から総武快速線・成田線・鹿島線を経由して鹿島神宮駅に至るという大胆なものだった。その時刻表を見てみよう。

 

カシマスタジアム号(2021年8月2・3・5日)
列車名

31

1

3

33

5

35

7

9

37

東京(発) 11:11 11:37 12:10 12:50 13:36
錦糸町 11:20 11:47 12:19 12:58 13:44
船橋 11:35 12:03 12:35 13:14 14:04
千葉 11:39 11:51 12:23 12:38 12:50 13:19 13:38 14:21 14:39
成田 12:12 12:36 12:55 13:10 13:24 13:54 14:11 14:57 15:09
佐原 12:41 13:12 13:35 13:52 14:05 14:27 14:52 15:27 15:42
鹿島神宮(着) 13:04 13:32 13:55 14:10 14:29 14:48 15:19 15:46 16:11

 

鉄道好きならワクワクする列車ではなかろうか。本数の少ない鹿島線において東京直結(一部千葉発着)の臨時列車を運行することで増発しようという試みなのだ。

 

停車駅は東京・錦糸町・船橋・千葉・成田・佐原・鹿島神宮となっている。車両は公表されなかったが総武快速線から成田線、鹿島線を経由するルート、グリーン車の利用はできないと書いてあったことからE217系かE235系だと思われる。

 

 

東京駅から鹿島神宮駅までの所有時間は約2時間20分、鹿島神宮駅にてカシマサッカースタジアムへ向かうシャトルバスに接続する。カシマスタジアム号は臨時列車の中でも奇抜なものだったため鉄道ファンからの注目度は高かった。

 

が、期待に胸を踊らせていたのもつかの間。東京都に緊急事態宣言、オリンピックは無観客で開催されることになり、観客を運ぶ必要がなくなった。これによりカシマスタジアム号を含むほとんどの運行計画を取り止めたのだった。

 

幻に消えたカシマスタジアム号。もし運行されていたら多くの鉄道ファンが集まっていただろう。この取り止めをいいように取るか、悪いように取るか・・・。

 

 

 

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